任期終了まで約2カ月を残したバイデン大統領が、次男ハンター氏の違法銃所持および脱税に関する罪を恩赦すると表明した。当初の約束とは裏腹の決定であり、大統領は「ハンターが政治的な目的で攻撃された」と主張。「父親として、そして大統領として」この判断を下したと語った。
アメリカAP通信によれば、バイデン大統領は1日(現地時間)に声明を発表し、「息子ハンター・バイデンに対する恩赦に署名した」と明らかにした。「ハンターへの容疑は、政敵が私を攻撃し、選挙戦に不利な状況を作り出そうと画策した結果生じたものだ」と述べ、「事実関係を冷静に見極めた人なら、彼が私の息子であることを理由に不当に標的にされたと結論付けるだろう」と語った。
さらに大統領は「これは間違いだ。ハンターを追及し続けた5年半の間、彼に対する絶え間ない攻撃と選別的起訴が行われてきた」とし、「もう十分だ」と強調した。「司法制度を信じているが、政治的思惑がこのプロセスを汚染し、正義を損ねたと考えている。父親として、そして大統領として、この決定に至った経緯を理解してほしい」と訴えた。
ハンター氏は2018年10月、デラウェア州の銃器店で薬物依存の経歴を隠して銃を購入し、関連書類を偽造したため、11日間にわたり違法に銃を所持したとして起訴された。
陪審団は昨年6月、ハンター氏に適用された違法銃所持に関する3件の容疑すべてに有罪の評決を下した。具体的な量刑は今月12日に言い渡される予定だった。アメリカのニューヨーク・タイムズ(NYT)は、該当する容疑について最高25年の懲役または75万ドル(約1億1,524万円)の罰金に処せられる可能性があるが、暴力行為を伴わない初犯の場合、実刑判決に至ることは稀だとしていた。
また、ハンター氏は銃器問題の他にも、2016年から2019年の間に少なくとも140万ドル(約2億1,508万円)の税金を納付しなかった容疑で昨年12月に起訴された。彼は昨年9月の裁判で脱税に関連する9件の犯罪容疑すべてについて有罪を認めた。ハンター氏はこの容疑で最大17年の懲役または最大130万ドル(約2億円)の罰金刑を受ける可能性があった。脱税の量刑言い渡しは今月16日に予定されていた。
昨年6月13日、主要7カ国(G7)首脳会議出席のためイタリアを訪れたバイデン大統領は、銃器容疑に関連して次男の刑を軽減する可能性について「ない」と答えた。「陪審団の決定に従うと言ったし、そうするつもりだ。恩赦を行うことはない」と述べる一方で「私は次男をとても誇りに思っている。彼は依存症を克服した」と強調していた。
なお、アメリカ大統領は連邦犯罪に対して恩赦権を行使できる。ドナルド・トランプ前大統領は昨年10月24日のインタビューで、ハンター氏の容疑に関連して、自身が勝利すれば恩赦する可能性があると明かした。トランプ氏は「バイデンとは異なり、私は彼らから悪いことをされても(恩赦を)完全に排除することはない」と述べた。しかし「ハンター・バイデンが悪人であることは明らかだ」とも強調した。