先月25日の午後5時頃、ソウル中区のロッテ免税店を訪れたが、5人以上の団体観光客を見かけることはほとんどなく、大半は1〜2人の小規模なグループが売り場を歩いていた。かつて中国の団体観光客に依存してきた免税店業界は、近年の個人旅行へのトレンド変化と中国経済の悪化により、産業が崩壊する危機に直面している。ロッテ・新羅・新世界・現代といった「ビッグ4」の免税店はいずれも連続赤字に陥り、コスト削減などの自助努力を行っているが、現状打開には至らず、店舗縮小を含む事業構造の調整が本格化する兆しが見える。
■中国団体観光客の消失で直面する危機
1日の免税業界の発表によると、今年第3・4四半期にロッテ免税店は460億ウォン(約50億6000万円)、新羅免税店は387億ウォン(約42億5700万円)、新世界DFは162億ウォン(約17億8200万円)、現代免税店は80億ウォン(約8億8000万円)の営業損失を計上したとのことだ。新型コロナウイルス感染症の流行前と比べ、韓国を訪れる外国人観光客数は回復傾向にあるが、免税店利用客数は依然として低迷している。韓国免税店協会によると、昨年国内の免税店を利用した外国人は602万人だった。2019年(2002万人)と比較すると3分の1に激減している。
業界では、売上に大きく貢献してきた中国人団体観光客の激減が最大の要因と分析している。かつては団体で免税店を訪れショッピングを楽しんでいた中国人観光客が、現在は個人旅行を選ぶようになり、街中のロードショップを楽しむスタイルへと移行している。先月27日の午前、新世界免税店で出会った中国国籍の観光客エリス氏(38)は「英語で十分にコミュニケーションが取れ、自由にスケジュールを組めるため、ガイド付きの団体観光の必要性を感じない」と述べ、「高級ブランド品は免税店や百貨店でしか手に入らないのでここに来たが、他の化粧品は午後に街中の店舗を訪れる予定だ。」と語った。
実際、この日の明洞の街には様々な国籍の観光客が見られたが、新世界やロッテ免税店では一部の中国人以外の外国人観光客の姿は少なかった。さらに、中国経済の悪化も免税店に大きな打撃を与えている。中国人観光客のAさんは「友人に頼まれたものを買いに来ただけで、自分自身は特に欲しいものがない」と述べ、「中国経済が低迷している影響で、韓国旅行に来る人が減っている」と語った。
■業界の自助努力と構造改革の限界
長期的な赤字経営に直面している免税店業界は、規模縮小と資金調達に奔走している。ロッテ免税店は先月8月に希望退職を実施し、新世界免税店を運営する新世界DFも、先月29日まで創業以来初となる希望退職を募った。新羅免税店を運営するホテル新羅は、今年下半期に創業以来初めて1328億ウォン(約146億800万円)の転換社債を発行した。
個人観光客をターゲットにした新たな戦略や事業の多角化を図っている。新世界免税店の関係者は「キャセイパシフィック航空と提携し、新世界免税店での購入時に航空マイレージが貯まる仕組みを導入している」と述べた。ロッテ免税店は東大門のファッションブランドを海外バイヤーに紹介するオンラインプラットフォームを構築し、日本で試験運用中だ。最近では、ダンススタジオ「ワンミリオン」とコラボしたファッションブランド「シンギュラー」を立ち上げ、ファッション事業にも直接参入した。
しかし、業界内ではこうした取り組みは応急措置に過ぎないとの見方が強く、構造的な改革が必要だという声もあがっている。ある業界関係者は「免税店各社が人員削減や財務改善に取り組んでいるが、中国経済の低迷が続く限り、大きな打開策は見出せない」と述べた。