
米国ドナルド・トランプ政権の広範な関税導入による米国の物価上昇(インフレーション)の可能性について、クリストファー・ウォラーFRB理事は影響が限定的になるとの見方を示し、懸念を否定した。
17日(現地時間) フィナンシャル・タイムズ(FT)は、ウォラー氏が訪問中のオーストラリアで開催されたイベントで、「いかなる関税も物価をわずかに押し上げるだけで持続的ではない」との基本的見解を述べたと報じた。
FTは、ウォラー氏の発言がトランプ政権の貿易政策はFRBの金融政策に影響を与えないとの認識を示していると分析した。
米国経済が成長を続け、物価が依然として目標を上回る水準で推移しているため、FRBは追加利下げに慎重な姿勢を示している。
さらに、トランプ政権の貿易政策による不透明な見通しも利下げ判断を難しくしている。
FRB内の連邦公開市場委員会(FOMC)は、短期的には米国の金利据え置きで一致している。
FTによると、FRB内では関税戦争を巡って高官間で見解の相違が見られ、ウォラー氏とは対照的に、シカゴ連銀総裁のオースティン・グールズビー氏とクリーブランド連銀総裁のベス・ハマック氏は物価上昇を懸念しているという。
ウォラー氏は「現時点では利下げを正当化するデータはないものの、企業が年初に価格を引き上げたため、今後数四半期にわたってインフレ率が低下する」と予測した。
米国の1月消費者物価指数は前年同月比3%上昇し、予想を上回る伸びを示したことで、FRBが即座に利下げできない状況を浮き彫りにした。
ウォラー氏は「今後数カ月間のデータを通じて、第1四半期のインフレ後の物価低下が過去の傾向と一致するかを見極める」と述べた。 また、彼は「2025年が2024年と同様であれば、今年中の利下げが適切だろう」と語り、今後ホワイトハウスから発表される経済政策の不確実性にもかかわらず、現在のFRBの金融政策が継続されるわけではないことも示唆した。
そのうえで、今後のデータが利下げまたは据え置きを支持する場合、トランプ政権の政策の明確さに関係なく、それに基づいて行動する方針も示した。