強硬な反中路線を掲げていたアルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領が、対中姿勢を一転させ、中国との協力強化に向けた動きを見せた。投資拡大を要請し、経済再建のための方針転換と見られている。
昨年のアルゼンチン大統領選挙では、中国に対して厳しい発言を続けていたミレイ大統領だが、20日、ブラジル・リオデジャネイロで開催された主要20カ国(G20)首脳会議において、中国の習近平国家主席と初めて会談。アルゼンチンへの中国の投資拡大や貿易協力の強化について合意した。
中国の国営通信社である新華社などによれば、習主席は会談で「金融分野での協力を通じ、アルゼンチン経済と金融の安定維持を支援する」と述べたとのことだ。
習主席、アルゼンチンへの投資拡大とインフラ協力強化の意向を表明
習主席はアルゼンチンとの関係について「経済貿易構造が高度に相互補完的で、協力の可能性が大きい」と指摘し、中国の「一帯一路」構想を通じてエネルギー、鉱業、インフラ分野での協力拡大に意欲を示した。
これに対し、ミレイ大統領も中国の支援に謝意を示し、中国の投資拡大を歓迎するとともに、台湾問題に関する中国の立場を支持し、台湾が中国の一部であるとする「一つの中国」原則を支持する姿勢を明確にした。
中国外務省報道官「ミレイ大統領が両国協力深化の意向表明」
中国外務省の華春瑩報道官はこの日、X(旧ツイッター)で「ミレイ大統領は中国とアルゼンチンの友好関係を高く評価し、両国協力を深化させる意向を示した。習主席はこれに謝意を表した」と伝えた。さらに「習主席は今年10周年を迎えた両国間の包括的戦略的パートナーシップの持続的かつ安定的な発展を促進しようと呼びかけた」と付け加えた。
ミレイ大統領は前日夜、国防相と内務相を急遽リオデジャネイロに招き、中国との首脳会談に向けて「入念な準備をした」とアルゼンチンメディアは報じている。
ラ・ナシオン紙は「ミレイ大統領が14日にマー・ア・ラゴでドナルド・トランプ前米大統領と会談した後、5日後にトランプと対極にある中国首脳と握手した」と報じた。
昨年12月に就任したミレイ大統領は、かつて中国を「共産主義者とは取引しない」、「あの国(中国)には自由がない」と公然と批判していた。
しかし、大統領に就任後は「中国は非常に魅力的な貿易相手」と評価を変えた。
この一連の流れを見て、ミレイ大統領が経済再建のため中国からの投資誘致と貿易関係拡大を模索しているとの見方が強まっている。
インフレ率193%台のアルゼンチン、経済危機脱却のため中国からの投資に期待
アルゼンチン経済は年間インフレ率が193%に達するなど危機的状況にあり、ミレイ大統領は予算削減や人員整理を進める一方で、大豆をはじめとする農産物の対中輸出拡大や通貨スワップ協定の更新に注力。中国企業に対し、大規模投資促進制度(RIGI)への参加も呼びかけている。
一部では、政治面でアメリカと、経済面では中国との関係を改善する動きだと分析している。
2023年12月に就任したミレイ大統領と習近平主席の会談は今回が初めて。大統領就任後、ミレイ氏は対中批判を徐々に抑制しており、両国の貿易関係が強化される中で、中国からの支援を受けて債務問題を克服しようとする姿勢の変化が見られる。
ミレイ大統領は14日、フロリダ州でトランプ前大統領と会談。トランプ氏にとって大統領選後初めて対面した外国首脳となった。ミレイ氏は「アルゼンチンのトランプ」とも呼ばれている。