米国の専門職ビザH-1Bを巡る意見の相違により、ドナルド・トランプ次期大統領の支持層内で内紛が続いている。
白人労働者中心の伝統的な支持層とテスラのイーロン・マスクCEOを中心とした新たな支持勢力との対立が、トランプ氏の就任を目前に激化している。
現地時間12日、英ガーディアン紙によると、トランプ氏の元側近とされるスティーブン・バノン元ホワイトハウス首席戦略官が、イタリアメディアとのインタビューで過激な表現を用いてマスク氏を厳しく非難した。
バノン氏は「H-1Bビザは技術権力者たちが移民システム全体を操作するためのものだ」とし、「マスクは本当に邪悪な人間だ。以前はマスクがトランプ陣営に金を出していたので我慢していたが、もう我慢するつもりはない」と述べた。
さらに、トランプ氏の就任日である20日までにマスク氏を追い出すと言い、「ホワイトハウスには自由に出入りできなくなり、一般人同様の扱いを受けることになるだろう」と強調した。
バノン氏はマスク氏の唯一の目標が「億万長者」になることだとし、「マスクは技術封建主義を支持しているが、私はそうではない。彼の成熟度は子供レベルだ」と述べた。
また「マスクは出身地の南アフリカに帰るべきだ。なぜ世界で最も人種差別的な白人の南アフリカ人たちがアメリカの事に口出しするのを許しているのか」とも語った。
トランプ氏の就任を前に、支持層内部で専門職ビザH-1Bに関する意見の相違から引き起こされた内紛が拡大している。
支持層の不満は先月22日、ホワイトハウスの人工知能首席政策顧問にインド系の人物が内定したことで噴出した。南アフリカ出身で過去にH-1Bビザを保有していたマスク氏は、専門職の外国人材の確保が必要だとしてH-1Bビザを擁護した。
これについては、白人労働者を基盤とする伝統的な支持層と大統領選挙の過程で新たに加わったビッグテック支持者間の主導権争いとの見方が出ている。
一方、トランプ氏は先月末、「私は常にH-1Bビザを好んでおり、支持してきた」と述べ、マスク氏の立場を支持している。
マスク氏は前回の大統領選挙でトランプ陣営に2億7,700万ドル(約436億2,800万円)を投じ、トランプ氏の実力者として台頭した。
次期トランプ政権では顧問機関である政府効率部の長に指名され、分野を問わずトランプ氏に助言できる側近中の側近と目されている。
マスク氏がトランプ氏に接近し、外交、安全保障、通商などの政策に影響力を行使することにより、トランプ主義の立案者をはじめとする伝統的トランプ支持層には不安と疎外感が徐々に高まっている。
バノン氏はかつてトランプ氏の右腕とも呼ばれ、第1期政権でホワイトハウス首席戦略官を務めたものの、1年も経たずにトランプ氏から信頼を失った。
その後、極右傾向のメディアやポッドキャストを中心に活動し、トランプ支持層内で影響力を確保することで、トランプ氏との関係も改善している。