イラン主導の「抵抗の枢軸」の一員として最後まで戦い続けていたイエメンの反政府勢力フーシ派が、拘束していた貨物船の乗組員を解放し、紅海での攻撃中止を宣言して和解の姿勢を示した。しかし、新たに発足したアメリカの第2期トランプ政権は、反政府勢力フーシ派をテロ組織に指定し、圧力を強化し続けている。
現地時間22日、米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、反政府勢力フーシ派はこの日、自動車運搬船「ギャラクシー・リーダー号」の乗組員を解放したと発表した。反政府勢力のアアブドルマリク・アル・フーシ最高指導者は演説で「パレスチナのガザ地区との連帯と停戦協定支援のため、乗組員を解放した」と述べた。
この船舶はイスラエルの海運会社が所有するが、英国領マン島に本社が登録されている「レイ・カー・キャリアーズ」の所有船である。拉致事件当時は日本の海運会社日本郵船が運航していた。
反政府勢力フーシ派は中東の親イラン組織ネットワーク「抵抗の枢軸」に属し、2023年10月に同じ「抵抗の枢軸」に属するガザ地区の武装組織ハマスがイスラエルとの戦争を開始すると即座に介入した。紅海南部に拠点を置くフーシ派は、スエズ運河を通過するイスラエルの船舶を攻撃すると主張したものの、まもなくアメリカをはじめとする西側諸国の船舶を無差別に攻撃し始めた。フーシ派は2023年11月19日、ヘリコプターと高速艇を使用して紅海を通過中の「ギャラクシー・リーダー号」を拿捕し、乗組員25名と船舶を拘束していた。
フーシ派は、ハマスだけでなくイランとレバノンの武装組織ヒズボラがイスラエルとの戦闘を続ける中、引き続き紅海を通過する船舶への攻撃を続けた。2隻の船舶が沈没し、少なくとも100隻以上の船舶が被害を受けた。これを受け、アメリカをはじめとする西側諸国は昨年から連合艦隊を編成し、紅海の警備に乗り出した。アメリカとイギリスはフーシ派に対し260回以上の空爆を実施。その間、多くの国際海運会社がスエズ運河を迂回する形に航路を変更し、これにより莫大な金銭的・時間的損失を被った。
フーシ派の立ち位置は、ヒズボラが昨年11月にイスラエルと停戦し、ハマスも今月19日に停戦に入ったことで徐々に孤立していった。フーシ派は20日の声明で、ハマスが停戦を開始したことを受け、今後イスラエルを除くアメリカやイギリスなど他国の船舶を標的とした攻撃を制限すると表明した。フーシ派のアル・フーシ指導者は22日、停戦が失敗した場合には攻撃を再開する可能性があると警告した。
20日に第2期目を開始したアメリカのドナルド・トランプ大統領は、フーシ派の融和的な態度にかかわらず強硬策を講じた。22日、大統領令を通じてフーシ派を「外国テロ組織(FTO)」に指定するよう指示。同時に国務省と米国国際開発庁(USAID)に対し、フーシ氏を支援または擁護する団体への援助と支援事業の中止を命じた。トランプ大統領は「フーシ派の活動は中東におけるアメリカの民間人と軍人の安全や、我々の最も親しい地域パートナーの安全、世界の海上貿易の安定性を脅かしている」と述べた。
アメリカ政府の管轄下にある組織および個人は、FTOリストに掲載された対象に対し、武器や装備だけでなく、訓練や金融など様々なサービスを含む「物質的支援や資源」を提供することが禁じられている。アメリカのバイデン政権は2021年、当時7年目を迎えていたイエメン内戦の被災者に人道支援物資を届けるため、FTOリストからフーシ派を除外していた。