


NETFLIXオリジナル映画『グッドニュース』のピョン・ソンヒョン監督が作品公開後、ソウル・鍾路区三清洞(チョンノ区サムチョン洞)のカフェで行われたインタビューで、エンディングの裏話を語った。
『グッドニュース』は公開2週目を迎えた現在も好評を維持し、Netflix韓国映画部門でトップ10の1位を記録している。
『名もなき野良犬の輪舞』『キングメーカー ・大統領を作った男』『キル・ボクスン』を手がけたピョン監督の4作目の長編であり、Netflixオリジナルとしては2作目となる。
国家的ハプニングを描くブラックコメディ
映画『グッドニュース』は、1970年に日本赤軍派が民間機をハイジャックし北朝鮮へ向かった「よど号事件」をモチーフにしたブラックコメディだ。
危機の瞬間すら滑稽に映る権力の無能と不条理を風刺し、現実よりも映画的な国家的「喜劇」を描く。
作中では、中央情報部長パク・サンヒョン(リュ・スンボム)が、どんな難題も部下の解決屋アムゲ(ソル・ギョング)に押し付ける。北朝鮮出身のアムゲは与えられた任務を必ず遂行する人物で、今回のハイジャック事件でも民間機を金浦空港に誘導するため、新たな手下を探し出す。
その人物が空軍中尉で管制官のソ・ゴミョン(ホン・ギョン)だ。名前の漢字の通り「高く名を残したい」出世欲と名誉欲に満ちたエリート将校のゴミョンは、作戦成功で勲章を得られると信じ、誘拐された日本人パイロットと交信して飛行機を金浦(キンポ)国際空港に誘導する斬新なアイデアを提案する。
しかし、日韓官僚の滑稽な言動、ハイジャック犯の狂気、そして混乱する乗客たちが交錯し、不条理劇のような展開が繰り広げられる。
ピョン監督の言葉通り「笑いながら観ているうちに、最後には背筋が冷たくなる映画」だ。
勲章の代わりに時計一つ…栄光ではなく体制の束縛
事件が人的被害なく収束した後、ソ・ゴミョンは功績を称えられインタビューまで受けるが、与えられたのは勲章ではなく大統領の腕時計ひとつだった。
雨に打たれた犬のように取り残されたゴミョンは、その時計をしぶしぶ腕に巻く。
ピョン監督は「劇的な悲劇にせず、淡々と置いておく方が現実的で、むしろ残酷だと思った」とし「ホン・ギョンは撮影現場で実際にその時計をつけたくないと言った。ゴミョンの立場なら自尊心が許さないと話していたが、あえてその感情で演じてほしいと頼んだ」と語った。
そして「それをつけなければ明日を生きられない。理不尽でも耐えて進むのが、力なき者たちの生き方。栄光の証ではなく、体制の束縛であり、それを合理化してこそ生き延びられる現実だ」と付け加えた。
ゴミョンとアムゲは、名もなく生きる無数の人々を象徴しているという。
ピョン監督は「二人は権力の下で働かされる、結局は私たち自身の写し鏡のような存在。月の表と裏のような人物だ」と語る。
ゴミョンは権威と名誉を信じる人物であり、アムゲはその虚構を見抜いた冷笑主義者だ。だが二人とも結局は雨の滑走路に立ち尽くす犬のように、体制の片隅で無力な存在として描かれる。
「『有名』の反対が『無名』なら、これは有名を夢見た者が無名になる過程」とし「最初から『無名』として登場する人物がいたら面白いと思った」とキャラクター設定の背景も明かした。

イライラと冷笑から生まれたブラックコメディ
ピョン監督は『グッドニュース』の出発点を「毎朝聞いていたニュースだった」と振り返る。
「苛立ったんです。信じてきた事実が実はそうではなかったと気づく混乱、盲目的に信じる人々、真実のように装われた歪み、そんな現実への苛立ちが出発点でした」
さらに「イデオロギーの時代は終わったと言われるが、対立は今も繰り返され、主張する者たちは結局、自らの信念と異なる行動を取る。その矛盾した現実への冷笑と皮肉が積み重なってこの映画を作ることになった」と語った。
映画には著名人の名言が繰り返し登場する。その中で「真実は月の裏側にある。だが表が嘘というわけではない」「起きた事実、少しの創造力、そして信じたい意志。この三つが合わされば嘘も真実になる」といった台詞は、ピョン監督自身の創作による「偽の名言」だという。
ピョン監督は「名言は結局、権威の象徴。人々はそれを信じ、ゴミョンもまたその一人。アムゲはそれを『戯言』と切り捨てる。私はその間にある距離、真実の表と裏が異なるという点を描きたかった」と述べた。
さらに「このテーマを語ること自体の『権威』すら嫌だった。だからこそ、その権威を自ら裏返す形で描きたかった」と締めくくった。
ピョン監督は俳優ホン・ギョンの演技について「同世代の俳優の中で最も演技が上手いと思う。ドラマ『弱いヒーロー Class 1』の頃から注目していた」と称賛した。