
ドナルド・トランプ米大統領の関税政策がニューヨーク株式市場に冷や水を浴びせる一方、欧州市場を含む海外市場は活況を呈している。
トランプ氏が掲げる「アメリカを再び偉大に(Make America Great Again・MAGA)」という政策が、皮肉にも「ヨーロッパを再び偉大に(Make Europe Great Again・MEGA)」する結果をもたらしている。
8日(現地時間)、主要海外メディアの報道によると、昨年11月5日(現地時間)のトランプ氏の当選後、一時急騰していたニューヨーク株式市場は、今年に入って上昇が鈍化し、トランプ氏の関税政策が矢継ぎ早に打ち出される中でマイナスに転じた。昨年の大統領選当日である11月5日に5782.76ポイントまで上昇していたS&P500指数は、7日には5770.20ポイントで取引を終えた。
S&P500指数は年初来で1.9%下落している。
トランプ氏の当選後、S&P500指数は急騰し、11月6日から11日までの4取引日連続で史上最高値を更新した。今年も1月24日には6118.71ポイントまで上昇した。
しかし、トランプ氏がMAGAを掲げながら関税カードを切り始めたことで、この流れは逆転した。S&P500指数は1月24日の高値から7日までに5.7%下落した。特にトランプ氏の一貫性を欠く行動による政策の不確実性が投資家心理を揺さぶっている。トランプ氏は3日、メキシコとカナダに予定通り4日から25%の関税を課すと発表した。ところが突如5日には、メキシコとカナダへの自動車関税を1カ月延期すると決定。6日には自動車以外の一部製品にも関税を延期すると発表した。
しかし、トランプ氏は4月2日から相互関税が大規模に導入されるとし、「より大きなものが来る」との警告も忘れなかった。
トランプ政策の「不確実性」は、連邦準備制度理事会(FRB)の地域経済動向報告書であるベージュブックにも影響を及ぼした。バロンズによると、5日にFRBが発表したベージュブックでは「不確実性」という言葉が47回登場した。1月のベージュブックと比べて約3倍多く言及された。
トランプ政策の不確実性による不安感は、米国債利回りの急落からも読み取れる。市場金利の指標となる10年物米国債利回りは、1月には4.8%を上回っていたが、先週には4.1%まで下落した。7日の終値は4.305%だった。
投資家が不安から安全資産である米国債への需要を高めたため、価格と反対に動く利回りが急落した。ニューヨーク株式市場のS&P500指数は先週3.1%、ハイテク株中心のナスダック総合指数は3.5%下落した。
一方、欧州市場は上昇基調にある。欧州株式市場の動向を反映するSTOXX欧州600指数は、今年に入って9%上昇している。
金融アドバイザリー・資産運用会社ラザードの最高市場戦略家(CMS)ロナルド・テンプル氏は、ドイツのDAX指数など欧州の株価指数が今年上昇傾向にあると指摘し、今後も欧州市場は関税リスクにさらされて脆弱化したニューヨーク市場を上回る展開が続くと予想した。
テンプル氏は「ニューヨーク市場は、ようやく通商政策の不確実性がもたらす潜在的な悪影響を織り込み始めた」とし、「さらなる下落の中で脆弱性が続くだろう」と悲観的な見方を示した。さらに「米国以外にも世界中に投資機会がある」とし、「バリュエーションがかなり低く、過小評価されているため上昇の余地がある市場が多数存在する」と強調した。