ドナルド・トランプ前米大統領が5日(現地時間)のアメリカ大統領選挙で早期に勝利を決めたことで、世界の株式市場は苦境に立たされている。
しかし唯一、ニューヨーク株式市場だけが祝賀ムードに包まれている。
トランプ次期大統領が掲げた公約が、落ち着きを見せていたアメリカのインフレを再び刺激し、それにより連邦準備制度理事会(FRB)の利下げが予定通りに進まず、ドル高を招くとの予測が、ニューヨーク株高と他の市場の株安の一因となっている。
また、トランプ政権の2期目で保護主義が強化されるとの見通しも、世界の株式市場にとっては重荷となっている。
7週間で様相は一変
CNBCによると、世界の株式市場とニューヨーク株式市場の雰囲気は7週間で大きく変化したという。
データトレックリサーチの共同創業者であるニック・コラスは18日夜の日次分析ノートで、アメリカを除く世界の株式市場が今年の上昇分を7週間でほぼ帳消しにしたと指摘し、今年堅調に上昇していた世界の株式市場が、7週間で急落したと述べている。
コラス氏は、ドル高に加え、市場固有の要因が重なり、アメリカ以外の世界の株式市場が苦境に立たされていると分析している。
彼は、アメリカを除けば、今年第4四半期の残り期間において、安全な避難先となる主要国の株式市場は存在しないと断言している。
ニューヨーク株を除く世界株は足踏み
世界の株式市場とニューヨーク株式市場の動向を示す指標のひとつが、ナスダック市場に上場されている上場投資信託(ETF)の「アメリカを除く全世界指数(ACWX)」だ。正式名称は「iShares MSCI ACWI ex U.S. ETF」で、このETFは「iShares MSCI ACWI 」(全世界指数)からアメリカ株を除いた株式で構成されている。
このETFには、世界最大の半導体受託生産企業である台湾のTSMCや、肥満治療薬「ウェゴビ」を開発しGLP-1系ダイエット薬市場を切り開いたデンマークの製薬会社ノボノルディスク、中国のIT大手テンセントなどが含まれている。
ACWXはアメリカ大統領選挙前までは悪くない推移を見せており、年初から5日までで8.6%上昇していたが、大統領選後、6日以降は株価が3.03%下落した。
また、年初来の上昇率も5%程度に縮小した。
一方、ニューヨーク株式市場の代表的指数であるS&P500は堅調な推移を維持している。
S&P500は5日のアメリカ大統領選挙当日までに21.2%上昇し、大統領選後も18日までにさらに1.9%上昇した。
先週、トランプ・ラリーが収束し1週間で2.1%下落したものの、引き続き堅調な上昇を維持している。S&P500は年初来で24%急騰している。
明暗を分ける展開は当面続く
コラス氏は、ニューヨーク株式市場と世界の株式市場の明暗を分ける展開は当面続くと予想している。
世界の株式市場が今年低い上昇率を示し、ニューヨーク株式市場に比べて魅力的な買いシグナルを発しているものの、先行きは不透明だからだ。
トランプ政権2期目でアメリカの保護貿易政策が1期目よりも強化され、アメリカ第一主義の下で各国の対米輸出が打撃を受ければ、世界の株式市場は上昇の余地を失う可能性がある。
また、トランプ氏の減税と保護貿易主義によって、アメリカの財政赤字とインフレが刺激されれば、アメリカの金利が上昇し、世界の資金がアメリカに集中することになる。
ニューヨーク株式市場は、少なくともトランプ氏の2期目の政策が具体化するまでは、当面、世界の株式市場と明確に区別された強気相場を続ける可能性が高いとコラス氏は分析している。